2015年9月16日
1.暦の種類
大まかに分類すると暦は次の三種類に分類される。
A.太陽暦
B.太陰暦
C.太陰太陽暦
特徴としては、太陽暦は地球の公転に基礎を置くものであり、一年は概ね365日、代表は現在のグレゴリオ暦である。太陰暦は月の運行に基礎を置く。月は約29.5日で元に戻る。(この周期を一朔望月という。イスラム暦は太陰暦で、現在でも用いられている。)しかし、これで行くと一年の長さが365日にならず、色々な問題を起こす。太陰太陽暦は太陰暦を基礎としながら太陽暦の要素を取り入れて補正する事により、季節のズレ等の問題に対処したものである。
[註]月についての周期には色々なものがある。月が恒星に対して(空間に対して)公転する周期を恒星月というが、これは27.321661日である。これが本来の公転周期なのだが、地球が太陽のまわりを公転しているため、この周期では月の位相は元に戻らずもう少し回らないといけない。この位相に関する周期が朔望月であり、29.530589日である。そのほかにも、交点月(27.212220日)や近点月(27.554551日)が知られている。ただし、暦に関して重要なのは朔望月である。また、月の軌道は楕円であるから、上記の数値は平均値である。
日本でいう旧暦は、この太陰太陽暦である。
次は日本で使われていた暦の歴史である。初期のころ、日本にはまだ暦を作る技術がなく、大陸から輸入されていたというが、実に11種類もある。
・元嘉暦 690- げんかれき 持統天皇の頃
・儀鳳暦 697-763 ぎほうれき
・大衍暦 764-856 だいえんれき 奈良時代、遣唐使
・五紀暦 857-861 ごきれき
・宣明暦 862-1683 せんみょうれき 最後の輸入暦
・貞亨暦 1684-1754 ていきょうれき 渋川春海=安井算哲作
・宝暦暦 1755-1797
・寛政暦 1798-1843
・天保歴 1844-1872 てんぽうれき 定気法の採用
・太陽暦採用 明治5年
・グレゴリオ暦へ変更 明治31年
宣明暦は何と800年間も使われていた。また貞亨暦は、初めて日本人が作ったものと言われている。囲碁ファンには、安井算哲の名はおなじみであろう。最後は天保歴であり、現在旧暦と言えば一般にはこの天保歴を指す。
2.旧暦の基礎知識
A.一年の長さ 一太陽年=365.2422日
B.ひと月の長さ つきたち→ついたち(朔日)
月が満ちた状態 望月(もちづき)
この周期が、一朔望月=29.530589日(平均値)
太陰暦では、30日の大の月と29日の小の月を概ね交互に配置する。これで月の運行と合致し、ほぼ15日が満月となる。ただし一年の長さは (30+29)×6=354 日となる。一年あたりほぼ、11日ずれていく事になる。重なれば季節までずれていく。
太陽暦ではその心配はないが、ひと月の長さが朔望月と異なるため月齢とあわない
この折衷案が、太陰太陽暦であり、その最大の特徴は、閏月の導入である。つまり、月そのものを挿入する。したがって、この暦では一年の長さが最小353日、最大384日となる。太陰暦における日のずれは,概ね一年で11日なので、三年でおよそ一カ月ずれる。よって、概ね三年に一度閏月がある計算になる。
もう少し正確に言うと
235朔望月=29.5306*235=6939.691 日
19太陽年 =365.2422*19=6939.6018日
である事が発見された。この差は 0.0892日=2.1408 時間 である。一年を12カ月とすれば19年は 19*12=228カ月 となり、235朔望月とは7カ月のずれを生じる。逆にいえば19年に7回の閏月が必要となる。
この閏月をどこに配置するかは太陰太陽暦にとって重大な問題である。(置閏法と呼ばれる。)閏月は例えば三月と四月の間に置かれれば「閏三月」と呼ばれる。