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2015年9月16日

暦のはなし 4

暦のはなし(4)

5.六 曜

 

現在でも時としてこの六曜は使用されている。しかし、この歴史的経過は興味深いものである。江戸時代に用いられていた暦は暦注と呼ばれる沢山の注釈がついていた。実際、暦作成者の主たる仕事はこの歴注を埋めていくことと言っても過言ではないほどであったという。しかし、太陽暦の作成にあたり、明治政府はこれらの歴注一切を廃止した。しかし、江戸時代、ほとんどなじみの無い歴注があった。それが六曜である。
明治以降の太陽暦は極言すれば誰にでも作れる。その差別化を図るために暦業者がとびついたのが六曜であったということである。(もっとも、江戸庶民には六曜はおろか、七曜もほとんど使われていなかったという話もある。)私がこの文章を書く直接のきっかけが六曜であったのは始めに述べたが、そういうこともあり、ここで六曜を取り上げる。

 

六曜の順番は、先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口 の順である。6個しかないので、
(旧暦) —  正月、七月の朔日は  先勝
————    二月、八月の朔日は  友引
————  三月、九月の朔日は  先負
————  四月、十月の朔日は  仏滅
————  五月、十一月の朔日は 大安
————  六月、十二月の朔日は 赤口

と決められており、(閏月については、前の月と同じとする。)順に続いていく事になる。
この関係は、旧暦での 月をX,日をY とすると
(X+Y) mod 6
(mod 6 は6で割った時の余りを求める。)
と見る事ができる。閏月については前の月と同じ数値とする。この対応関係は、正月一日が先勝なので
先勝  2
友引  3
先負  4
仏滅  5
大安  0
赤口  1
となる。六曜が完全に一巡しない時があるのは、一巡する前に次の朔日が来る時である。各朔日でリセットされるのが、次に述べる干支との大きな違いである。

 

 

6.干 支

 

干支は六曜以上にわれわれに馴染みの深いものであろう。たとえば今年2015年は未(ひつじ)年だが、そんなことはほとんどの人が知っている。ただ、干支といわれるとおり、そこには十干と十二支があり、その組み合わせはお互いに一年に一つずつ進み、組み合わされていく。10と12の最小公倍数は60で、この組み合わせが一巡するのに60年かかる。還暦といわれるゆえんである。
大抵の人は甲、乙、丙の言葉くらいは知っているが、それが十干の一部だとは知らない人も多いのではないだろうか。読み方も含めて、ここで整理しておこう。
—     十干                 十二支
甲   こう     きのえ        子    ね
乙   おつ  きのと         丑    うし
丙   へい  ひのえ          寅    とら
丁   てい   ひのと        卯    う
戊   ぼ     つちのえ       辰    たつ
己   き      つちのと        巳    み
庚   こう      かのえ         午    うま
辛   しん    かのと        未    ひつじ
壬   じん    みずのえ       申    さる
葵   き      みずのと        酉    とり
——————————————        戌    いぬ
——————————————        亥    い
(この十干の読みかたは、五つの惑星の木、火、土、金、水 に分け更にこれに兄弟の強弱をつけると説明されている。)
この干支の巡りは絶えることなく、延々と繰り返されてきている。(不断と呼ばれる。)この巡りは改元があろうと、改歴があろうと連続しているのである。ところで、年について干支が割り当てられていることは良く知られているが、実は各月にも、各日にもそれぞれ干支が割り当てられている。この方法もやはり不断である。たとえば今年2015年9月15日は、旧暦8月3日、干支は甲午(きのえうま)である。この簡単な求め方も後に考察する。

 

 

7.九  星

 

 

かつての旧暦には、実にさまざまな暦注が書き込まれていた。そのほとんどは占いに使用されたもののようであるが、ここでその内容に立ち入るつもりはない。たとえば、十二直、二十八宿とかいったものである。九星もそのような暦注の一つである。ただ、私の手元にある公益社団法人日本測量協会が発行しているカレンダーには、六曜と同時に日々の九星(日家九星という。)も書き込まれており、少し興味深いので、ここで取り上げることにした。

 

九星魔法陣

1から9までの数字を図のように配置する。これは一種の魔法陣であり、縦横斜、何れの和も一定である。これが基本の配置で年々循環してゆく。その方法は一つ少ない数に置き換わる。つまり 9→8→7→6→5→4→3→2→1→9 と循環する。(もちろん、循環が始まれば、魔法陣としての性質は失われている。)この数に更に次の色を割り振る。
1(白)、2(黒)、3(碧)、4(緑)、5(黄)、6(白)、7(赤)、8(白)、9(紫)

木日土金水

これとは別に、同じ3×3の枠に、土、木、金、火、水を図のように配置する。

九星配置

以上をすべて組み合わせると、図の基本配置が出来上がる。この中央を「中宮」という。この中宮が、その年の九星である。(年家九星という。)これは繰り返しであるから、西暦年から簡単に計算できることが想像できるだろう。ただし、上記の通り数字は減少していくので対応関係は逆順になる。
先にも述べたが、九星もまた各日に割り振られている。(日家九星)ただし、この規則は不断ではなく、かなり複雑である。その大きな理由は、陽遁、陰遁 と呼ばれるシステムである。
冬から夏にかけては  一白→二黒→三碧………→九紫→一白  と並ぶのが陽遁 180日
夏から冬にかけては、九紫→八白→………→一白→九紫 と逆順に並ぶ、これが隠遁 180日
この切り替わりは、
1) 冬至に最も近い甲子の日を切り替え日として、一白 から 陽遁を開始する。
2) 夏至に最も近い甲子の日を切り替え日として、九紫 から 陰遁を開始する。
が原則であるが、これだと一年が360日なのでどこかで調整が必要である。この調整は、11年から12年に一度の割合で、陽遁・隠遁の期間をそれぞれ30日(合計60日)延長して行う。(一年で約5日ずれるから、11年なら55日強、12年なら60日強のずれがある。)この延長期間の事を、九星の閏 と呼ぶ。この間の陽遁、隠遁の切り替えは
3) 冬至又は前後一日に甲午がある場合、甲午の日を切替日として、七赤 から陽遁 を開始する。
4) 夏至又は前後一日に甲午がある場合、甲午の日を切替日として、三碧 から隠遁 を開始する。
という規則に従う。
結局、夏至、冬至に最も近い甲子の日を求めることが基本だが、それには夏至、冬至の日の計算、その周辺の日の干支の計算が必要になる。

色々と述べてきたが、暦の性質等の話はこれくらいにして、次からは、これらを具体的に計算する方法について考察する。

 

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